ビートルズが設立したアップル・レーベルからの第1弾アルバム。最初で最後の2枚組のオリジナル・アルバム。まっ白なジャケットから『ホワイト・アルバム』と呼ばれている。サイケデリック花盛りの当時としては、かえって新鮮である。チャック・ベリーの「バック・イン・ザ・U.S.A.」をパロディにしてビーチ・ボーイズ風コーラスを聴かせるオープニング・ナンバー、初めてスカのビートを取り入れたdisc-1(4)、室内音楽風のdisc-1(12)、イギリスのブルース・シーンをちゃかしたdisc-2(2)、今もハード・ロック、ヘヴィメタ関係者がこぞってカヴァーするdisc-2(6)、ジョンとヨーコの前衛作品disc-2(12)、ストリングスとリンゴのヴォーカルがすばらしいララバイD(13)、などなど、内容は実にカラフルである。西洋音楽の歴史、と称されるほど幅広く、何でもありの盛りだくさんなアルバムだ。 1967年8月にマネージャーのブライアン・エプスタインを亡くしたこともあり、4人が団体行動をうまくとれなくなった時期である。やはりエプスタインの存在は大きかったのだ。4人そろってレコーディングする機会は減ってしまう。そのためにポールが全部の楽器を多重録音して仕上げてしまった曲もある。それはポールのファースト・ソロ・アルバム『マッカートニー』に通じるところもあるし、また、マルチ・プレイヤーの先がけとも言えるだろう。 バラエティに富んだ内容で、前作のようなトータル性はないが、あえてカラーをつけるとすれば、ヒット曲路線のキャッチーなA面、アコースティックなB面、ロックンロールのC面、実験的なD面、と言うこともできるのではないか。(CDでは、オリジナル・アナログ盤のA,B面がdisc-1、C,D面がdisc-2に収録) 曲が多いせいか、使用する楽器も多くて、曲調だけでなく音づくりも多彩である。パーカッションやサウンド・エフェクトの使用などで、新しい試みもいたるところで聴かれる。外部のミュージシャンの参加も、ぐっと増えた。disc-1(1)でリード・ギターを弾いているエリック・クラプトンは有名。その後もジョージをはじめとして長いつきあいになる。disc-2(1)ではヨーコ、リンダ、パティが、disc-1(6)ではヨーコ、モーリンと、それぞれの夫人がコーラスとして参加している。 チャートではもちろんナンバーワンに輝いたが、2枚組のものとしてはこれが初めてのことだった。イギリスでは予約だけで30万枚を越え、アメリカのビルボードではトップ100内に1年間もランク・インしていた。発売前もあとも大騒ぎの傑作である。
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